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タクロリムス水和物

項目名称

タクロリムス水和物

臨床的意義

適応症

基準値・異常値

有効治療濃度

血中濃度域 5~20ng/ml

  • 移植する臓器にかかわらず,高い血中濃度が持続する場合に腎障害が認められているので,血中濃度をできるだけ20ng/ml以下に維持する.
  • ただし,骨髄移植では血中濃度が低い場合に移植片対宿主病(GVHD)が認められているので,GVHD好発時期には血中濃度をできるだけ10~20ng/mlとする.
副作用
  • ショック,急性腎不全,ネフローゼ症候群,心不全,不整脈,心筋梗塞,狭心症,心膜液貯留,心筋障害,中枢神経系障害,脳血管障害,血栓性微小血管障害,汎血球減少症,血小板減少性紫斑病,イレウス,皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群),呼吸困難,感染症,リンパ腫などの悪性腫瘍,膵炎,糖尿病,高血糖

今後の検査の進め方

  • 測定して得られた血中濃度の実測値だけで解析するのではなく,患者の病態や年齢に応じた薬物の母集団パラメータを考慮して解析する方法にベイズ理論がある.1点の採血データだけであっても,薬物動態パラメータを算出することが可能である.そして,同じような背景をもつ患者群を集団としてとらえ,その患者母集団における個体差および個体内変動を定量的に評価し,これらの集団の背景データを利用して,ベイズ理論を用い,1回の採血で得られた血中濃度から患者固有の薬物動態パラメータを予測することが可能である.タクロリムス水和物は,このような母集団解析の対象薬物として注目されている.
  • タクロリムス水和物の体内動態は人種差に起因する相違が認められているが,近年,CYP3A5の遺伝子構造の差異によることが判明しつつある.今後,日本人においてもCYP3A5の一塩基多型(CYP3A5*3)の有無を調べることによって,投与計画を立案することが考えられている.
予想外の値が認められたとき
  • 骨髄移植でクレアチニン値が投与前の25%以上上昇した場合には,タクロリムス水和物の25%以上の減量または休薬などの適切な処置を考慮する.
  • 腎障害の発現頻度が高いので,頻回に臨床検査(クレアチニン,BUN,クレアチニンクリアランス,尿中NAG,尿中β2-ミクログロブリンなど)を行う.特に投与初期にはその発現に十分注意する.
  • 高カリウム血症が発現することがあるので,頻回に血清カリウムの測定を行う.
  • 高血糖,尿糖などの膵機能障害の発現頻度が高いので,頻回に臨床検査(血液検査,空腹時血糖,アミラーゼ,尿糖など)を行う.特に投与初期にはその発現に十分注意すること.
  • タクロリムス水和物の投与中に心不全,不整脈,心筋梗塞,狭心症,心筋障害(心機能低下,壁肥厚を含む)などが認められているので,使用に際しては心電図,心エコー,胸部X線検査を行うなど患者の状態をよく観察する.
  • タクロリムス水和物注射薬による過量投与では,BUN上昇,クレアチニン上昇,悪心,手振戦,肝酵素上昇などの症状の発現が報告されている.処置としては,脂溶性が高く蛋白結合も高いため,血液透析は有用ではない.必要に応じて支持・対症療法を行う.
  • タクロリムス水和物注射液との相互作用(併用禁忌)が報告されている.

出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
無断転載を禁止します

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受け、当社が転載しているものです。
転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

製品情報

添付文書記載の
測定結果
の判定法

<参照治療域>

全血中のタクロリムスに対する明確な治療濃度範囲はありません.臨床状態の複雑さ、免疫抑制に対する感受性とタクロリムス腎毒性作用の個人差、採血の時間、その他の免疫抑制剤との併用投与、移植のタイプ、移植後の経過時間及びその他の多くの要因によって、様々なタクロリムスの最適血中濃度が要求されます.タクロリムス値単独では治療内容を変更する際の指標にはできません.各患者は治療内容の変更が適用される前に、臨床的に徹底的に検討されるべきであり、タクロリムス濃度測定用試薬はその使用に先立って臨床経験を基にそれぞれの治療濃度範囲を確立する必要があります.このような治療濃度範囲は使用される市販の体外診断用医薬品に応じて幅がありますので、使用される各市販の試薬毎に設定される必要があります.異なる測定法による結果は、測定原理及び代謝物の交差反応性に違いがあるため、代用することはできません.同様に異なる測定法から得られた補正係数も、代用することはできません.患者ごとに1つの測定法を一貫して使用することをお奨めします.
Consensus Documentには12時間のトラフの全血濃度がターゲットとして記載されています.その濃度範囲は、移植のタイプ、移植後のステージ及び医療内容などによって5 ~ 20ng/mLになっています.*2これより高値又は低値は有害事象の増大と関係している可能性があります.
血中レベルは併用している薬物治療からも影響を受けます.HIV感染のためのウイルス蛋白酵素阻害剤による治療を実施している患者では、タクロリムスの代謝が著しく変化し、タクロリムス濃度が少なくとも100ng/mLに上昇する原因となり、通常とは異なる投与法が必要となることがあります.*3


<測定結果の判定>

・ 結果は各種自動分析装置によって自動的に計算されます.検体を用手法で希釈しないのであれば、さらに必要な操作はありません.各機器の取扱説明書を参考にしてください.
・ 詳しい説明は機器の取扱説明書及び測定操作法を参照ください.

<判定上の注意>

・ 本品は全血中のタクロリムス測定用の体外診断用医薬品で、血清又は血漿中のタクロリムスの測定には使用できません.
・ 測定結果は常に、患者の病歴、臨床症状及び他の所見を考慮して解釈ください.
・ 分析装置の微生物汚染はタクロリムスの酵素試薬のキャリーオーバーの原因になります.このことによりタクロリムス測定直後、他のEmit試薬で測定すると、得られた検体結果を上昇させることがあります.キャリーオーバーの影響の度合は、測定試薬によって異なります.詳細は、製造販売元にお問い合わせください.
・ 注意: 治療又は診断でマウスモノクローナル抗体の前処置を受けた患者の検体は、ヒト抗マウス抗体( HAMA)を含むことがあります.このような検体は、マウスモノクローナル抗体を利用する分析キットで測定すると、偽高値又は偽低値を示すことがありますので、これらの検体は、本品で測定しないでください.

* Jusko WJ, Thomson AW, Fung J, et al. Consensus document: therapeutic monitoring of tacrolimus (FK- 506). Ther Drug Monit. 1995;17:606-614.

*2 O e l l e r i c h M , Armstrong VW, Schutz E , Shaw LM. Therapeutic drug monitoring of cyclosporine and tacrolimus. Clin Biochem. 1998;31(5):309-316.

*3 Sheikh AM, Wolf DC, Lebovics E, Goldberg R, Horowitz HW. Concomitant human immunodeficiency virus protease inhibitor therapy markedly reduces tacrolimus metabolism and increases blood levels. Transplantation. 1999;68(2):307-309.

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