項目名称
膵アミラーゼ
臨床的意義
- アミラーゼは膵特異性が低いので,膵疾患の診断には特異性の高い膵型アミラーゼの測定が有用である.急性膵炎発症時には血中アミラーゼのほぼ100%が膵型アミラーゼとなり,急性膵炎の際には発症直後より上昇し,速やかに低下する.リパーゼやトリプシンとほぼ同様の動きを示すが,膵型アミラーゼの方がやや早く正常化する.
- 膵型アミラーゼの増加する疾患・病態としては,急性膵炎,慢性膵炎の急性増悪時,膵嚢胞,膵癌,薬剤性膵炎(ステロイド,サイアザイトなど)などの膵疾患をはじめ,胆道・乳頭部などの疾患での膵障害の合併やERCP・ESWL(体外衝撃波胆・膵石破砕療法)後などの膵管内圧上昇や膵液の逆流時,さらに消化管の穿孔または穿通,腹膜炎など膵液の消化管外漏出などがある.
- 膵型アミラーゼは膵特異性が高く,膵型アミラーゼの低下は,慢性膵炎非代償期,膵癌末期や広範膵切除後などにみられ,残存膵予備能の低下を示唆する.進行した広範びまん性の膵石症や膵性糖尿病では,膵型アミラーゼの割合が血中アミラーゼ総活性の10%以下になることが多い.
- 唾液腺疾患をはじめ種々の唾液腺型高アミラーゼ血症では,血中総アミラーゼ活性が急性膵炎と同等程度にまで上昇していても,膵型アミラーゼはほとんど上昇しないので鑑別は容易である.
- 種々の手術後に高アミラーゼ血症が認められるが,多くの場合は唾液腺型の高アミラーゼ血症である.術後の高アミラーゼ血症には,膵型アミラーゼの測定が必須である.
- そのほか唾液腺型の高アミラーゼ血症を示す疾患としては,アミラーゼ産生腫瘍,糖尿病ケトアシドーシス,子宮外妊娠,卵巣疾患などがある.
基準値・異常値
基準値 | 14~41U/l(参考値)、14~42U/l(参考値) |
---|---|
高値 |
急性膵炎,慢性膵炎急性増悪,膵嚢胞,膵管閉塞(膵石,膵癌,薬剤によるOddi筋の攣縮),急性アルコール中毒,消化性潰瘍の穿孔・穿通で膵を障害するもの 次に必要な検査
|
低値 | 膵外分泌不全(慢性膵炎非代償期),膵癌末期,膵全摘後,高血糖(糖尿病)次に必要な検査
|
予想外の値が認められたとき |
|
出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
無断転載を禁止します
「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受け、当社が転載しているものです。
転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。