LD,LDH
項目名称
乳酸デヒドロゲナーゼ
臨床的意義
- 次のような場合に本検査が必要となる.
①細胞傷害のスクリーニング(何か異常が生じていないかどうか,その程度).
②由来臓器の推定(いずれの組織に傷害が起こっているか).
③治療の効果判定. - 細胞の可溶性分画に存在するため,細胞の傷害時に直接もしくはリンパを通って間接的に血管内に流入する,いわゆる逸脱酵素(releasing enzyme)である.したがって,大多数の細胞傷害で血清LD活性が上昇するため,非常に感度の良い,体内での異常の発信シグナルである.
- 大きな臓器で傷害が広範囲に生じやすい肝臓や骨格筋,LD含量が高く崩壊が即血清に反映する赤血球などは血清LDが上昇しやすい.一方では,各アイソザイムの生体内半減期が異なるため(LD1からLD5の順番にそれぞれおよそ79時間,75時間,31時間,15時間,9時間),半減期の長いLD1の上昇する心筋梗塞では,LD上昇は他の酵素活性が基準範囲に復してもなお高値を示している.
- 他の可溶性分画に存在する酵素,AST,ALT,CKなどと比較することによって(表3-2),また,アイソザイム分析と併用することにより由来臓器の推定が容易になる.
基準値・異常値
基準値 | 101~193IU/l(1.68~3.22μkat/l) P→L(UV)法ではおよそ200~400U/l |
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高値 |
溶血性貧血,悪性貧血,心筋梗塞,白血病,悪性リンパ腫,悪性腫瘍,横紋筋壊死,急性肝炎,肝硬変など.すべての細胞に存在するため,いずれの細胞・組織の傷害によっても上昇する. Critical/Panic value 次に必要な検査上記疾患の鑑別のために,他の遊出酵素データ(AST,ALT,CK),LDアイソザイム分析を行う.LD異常高値でASTが高くない,すなわちLD/AST比が非常に高い(>50)場合は,腫瘍由来をまず考えて,全身の精査が必要である.病態と直結しない例については後述する. |
低値 | 失活因子,遺伝性LD-H欠損症のほか,抗腫瘍薬などで白血球が著しく減少している場合や,寝たきりでCKともども低い場合など,通常の状態よりも低値傾向を示すのは,LDが全身の細胞からの遊出酵素であることから理解できる.次に必要な検査失活因子や遺伝性欠損は,種々の病態でLDが予想どおり上昇せずデータ判読に影響を及ぼす恐れがあるため,同定しておく必要がある.それぞれ特殊な検査になるため,検査室に相談する. |
予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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JCCLS共用基準範囲
基準範囲 |
124~222U/L JCCLS(日本臨床検査標準協議会)が健常者の大規模調査データをもとに、日本国内で共通に利用可能な基準範囲として設定したもので、日本医師会をはじめとする関連団体の賛同を得て公表された基準範囲です. |
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製品情報
Lタイプワコー LD・IF
添付文書記載の測定結果 |
参考基準範囲* 血清 125~220U/L(37℃) *TIETZ Texbook of Clinical Chemistry and Molecular Diagnostics,4th Ed.602(2006). |
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