IgE
非特異的IgE,レアギン抗体
項目名称
免疫グロブリンE
臨床的意義
- アレルギー疾患や寄生虫疾患で高値を示す.寄生虫疾患の減少とアレルギー疾患の増加に伴い,日常臨床ではアトピー素因を背景にした気管支喘息やアトピー性皮膚炎,食物アレルギー,アレルギー性鼻炎などの入り口の検査として末梢血好酸球数などと併せて用いられることが多い.
- IgEはアレルギーと密接に関係してはいるものの,不特定多数の患者間比較では総IgE値がアレルギー症状の強さを必ずしも反映しない.これは,IgE以外にアレルギー症状発現を調整するメカニズムが働いていることを示している.一般に花粉などの季節性アレルゲンがIgE上昇の主因である場合にはシーズン後に高く,その後低下し,ダニなどの通年性アレルゲンでは年間を通じて高値の場合が多い.
- アレルギー,寄生虫疾患以外では,SLE,関節リウマチなどの膠原病,肝疾患で高値となる場合がある.気管支肺アスペルギルス症はアスペルギルスに対するⅠ,Ⅲ,Ⅳ型が関与するアレルギー性炎症であり,気管支喘息症状の増悪,茶色の膿栓を含む喀痰,IgE上昇,末梢血好酸球増加,喀痰中の好酸球,真菌,肺浸潤影,中心性気管支拡張などを特徴とする.ステロイドにて治療されることが多い.
- 疾患の頻度は高くないが高IgE症候群,Wiskott-Aldrich症候群,DiGeorge症候群などでもIgEの上昇をみる.高IgE症候群はJob-Buckley症候群とも呼ばれ,アトピー様皮膚炎,ブドウ球菌による皮膚化膿症,肺炎を繰り返し,白血球遊走能低下をみる場合が多い.乳歯が抜けにくい,脊椎側彎症,易骨折性などをみる場合がある.IgEは数千IU/mlに上昇し,末梢血中好酸球も90%の症例で上昇する.ブドウ球菌感染に長期抗生剤治療を要する.
- 一般臨床で遭遇するIgE高値では,圧倒的にアレルギー疾患が背景になっていることが多いが,自己免疫疾患,免疫系の異常,腫瘍性病変などの可能性も忘れてはならない.
- 異常低値はIgE以外の骨髄腫やB細胞系腫瘍性疾患のほかサルコイドーシスなどでみられることがある.
基準値・異常値
基準値 | 1歳未満 1.36~19.32 (IU/ml) 1~3歳 5.24~29.99 4~6歳 5.19~111.94 7~9歳 13.12~141.91 10~12歳 11.09~171.79 13~18歳 24.72~126.77 19歳以上 27.54~138.84 |
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高値 |
アレルギー疾患(気管支喘息,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎など),寄生虫疾患,肝疾患(急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変,原発性肝癌など),膠原病,IgE骨髄腫,気管支肺アスペルギルス症,高IgE症候群,ネフローゼ症候群,Hodgkin病,Behcet病,Wiskott-Aldrich症候群,DiGeorge症候群など 次に必要な検査アレルギー疾患では特異IgEなどを検査する.特異IgEはその抗原によって通年性,季節性,吸入系,食餌系などさまざまであり,一般的に陽性率が高いものを機械的に選択するのではなく,患者の生活環境,職業やアレルギー症状と疑わしい抗原への曝露歴などについての詳細な問診が必要である.特異IgE抗体のほか,皮膚プリックテスト,ヒスタミン遊離テストなどを必要に応じて施行する.抗原チャレンジテストは症状発現の原因抗原を確定するために有用であるが,アナフィラキシー反応などに対する万全の備えが必要である.寄生虫疾患では糞便検査,その他は疑われる疾患によって適宜検索を進める. |
低値 | 骨髄腫(IgE以外),慢性リンパ性白血病,H鎖病,サルコイドーシス,原発性および続発性免疫不全症 |
出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
LTオートワコー IgE
添付文書記載の |
参考正常値* 10~340IU/mL <判定上の注意> |
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