H.pylori Ab,ヘリコバクター・ピロリ抗体
項目名称
抗ヘリコバクター・ピロリ抗体
臨床的意義
- H.pylori感染診断において,単独でゴールドスタンダードとなる検査法はなく,複数の検査を組み合わせて判定することが望ましい.しかし,保険診療では1つの診断法しか認められないため,効率的な検査法を選択しなければならない.
- 血清・尿中抗体は日常診療で行う血液・尿検査の延長で行うことができるため,施行しやすい利点がある.特に集団検診など,多数例の診断を行う場合には効果的である.また,迅速にH.pylori感染を診断することができるため,上腹部痛で受診した患者において消化性潰瘍などの慢性疾患の存在を除外するうえで,有力な情報を得ることができる.
- 宿主の免疫能を介した結果をみるため,抗体価に差が生じる.また,他のHelicobacter属の感染による交差反応の可能性も否定できない.しかし,抗体価が低値,あるいは判定保留域の症例では胃癌発症が高率であるという報告もあり,注意が必要である.
- 除菌判定では除菌前に血清抗体を測定した場合のみ,同じキットで血清抗体を測定することが認められている.抗体価が半年で50%以下となった場合には除菌に成功した可能性が高い.しかし,除菌成功後でも抗体陰性化には1年以上を要する場合があり,個人差が大きい.しかし,尿素呼気試験や迅速ウレアーゼ試験のように投与薬剤の影響が少ない利点もある.
- IgG抗体にIgA抗体を追加すると診断精度が向上するという報告があるが,IgG抗体のみ測定することが一般的である.除菌後では血清IgA抗体はIgG抗体よりも早期に変化するとの報告もある.
今後の検査の進め方
- 血清抗体は現在のH.pylori感染だけではなく,既感染を反映する場合もあるため,尿素呼気試験など現在の感染の有無を調べることが必要である.さらに,内視鏡検査や胃透視などで,胃潰瘍,胃癌などの器質的疾患の検索が望ましい.
基準値・異常値
基準値 | 陰性 |
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高値 |
【陽性】 胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃癌,MALTリンパ腫,慢性胃炎,萎縮性胃炎ではH.pylori陽性の場合が多く,血清抗体でも陽性となる場合が多い. 次に必要な検査血清抗体は現在のH.pylori感染だけではなく,既感染を反映する場合もあるため,尿素呼気試験など現在の感染の有無を調べることが必要である.さらに,内視鏡検査や胃透視などで,胃潰瘍,胃癌などの器質的疾患の検索が望ましい. |
予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
Lタイプワコー H.ピロリ抗体・J
添付文書記載の |
ヘリコバクター・ピロリ抗体4.0単位/mL以上は陽性、4.0単位/mL未満は陰性です.* 単位:当社規格により設定した単位.なお、各自動分析装置ではU/mLと表示されます. *当社 社内データ <判定上の注意> ・抗体測定では他の細菌に対する抗体との交差反応の可能性も否定できませんので、判定結果に基づく臨床診断は、臨床症状や他の検査結果と併せて担当医師が総合的に判断して下さい. |
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