FRTN,ft
項目名称
フェリチン
臨床的意義
- 血清フェリチンの1ng/mlは貯蔵鉄8~10mgに相当するので,貯蔵鉄量の低下した鉄欠乏性貧血では小球性低色素性貧血,血清鉄低下,総鉄結合能増加に加え,血清フェリチン低下を特徴とする.潜在的鉄欠乏とは血清フェリチンのみが低下した状態で,貧血は呈しておらず鉄欠乏性貧血の前段階である.
- 血清フェリチンの上昇が認められたときは鉄が過剰に体内に蓄積された状態を最初に考慮すべきである.遺伝性疾患であるヘモクロマトーシス以外に頻回の輸血を繰り返している患者,骨髄造血能の低下する血液疾患や溶血性疾患で高値となる.
- 溶血性疾患の中でPNHは尿中への鉄喪失のため血清フェリチンは低値となるので注意する.
- 悪性腫瘍では血清フェリチン上昇がしばしばみられるが,腫瘍細胞の産生によるというより組織崩壊による機序が考えられている.
- 成人Still病や血球貪食症候群で血清フェリチンが異常高値(基準値上限の50倍以上)を呈し,診断や病態把握に役立つ.この場合の異常高値はこれらの疾患時に認められる活性化マクロファージなどから分泌された炎症性サイトカインによるフェリチン産生の亢進によると考えられている.
基準値・異常値
基準値 | 男性20~250ng/ml,女性10~80ng/ml |
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高値 |
貯蔵鉄増加(ヘモクロマトーシス,ヘモジデローシス,再生不良性貧血,鉄芽球性貧血,赤芽球癆,溶血性貧血,無トランスフェリン血症),悪性腫瘍(急性白血病,慢性骨髄性白血病,悪性リンパ腫,癌),慢性炎症性疾患(急性肝炎,肝硬変,膵炎など),糖尿病,膠原病(関節リウマチ,SLEなど)
劇症肝炎,ヘモクロマトーシス,血球貪食症候群,成人Still病 次に必要な検査血球貪食症候群を強く疑う場合は骨髄穿刺(場合によっては骨髄生検)を積極的に行い,血球貪食像の質的・量的異常を確認する. |
低値 | 鉄欠乏性貧血,潜在性鉄欠乏,発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH),反復瀉血後の真性多血症次に必要な検査血球計数(血算)から小球性低色素性貧血が同時に認められた場合は大部分が鉄欠乏性貧血と診断し,その原因となる慢性消化管出血,月経過多,子宮筋腫,痔疾,妊娠などの存在について検索する. |
予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
LTオートワコー フェリチン
添付文書記載の |
参考正常値* 男性:15~160ng/mL 女性:10~60ng/mL *金井 泉,金井正光:「臨床検査法提要」第31版,492-494(金原出版)(1998). <判定上の注意> |
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