AST(GOT)
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)
項目名称
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
臨床的意義
- 本検査は,肝機能評価やAST/ALT比による病態評価に用いられる.
- 肝障害をアミノトランスフェラーゼで評価する場合,AST/ALT比が有用である.急性,びまん性の肝障害(急性肝炎)では,多量の肝細胞が破壊され,AST,ALTは500U/l以上の高値を示し,肝含有量を反映して初期にはAST>ALTであるが,極期を過ぎれば半減期の長いALTが血中に残存するためAST<ALTとなる.
- 広範・高度な肝細胞壊死を示す劇症肝炎やショック肝では,AST,ALTは2,000U/l以上で,肝含有量の差とAST-mの逸脱によりAST>ALTを示す.高値を示したASTが急速に低下するのはAST-mの半減期が短いことによる.
- 慢性,持続性,散在性の肝障害(慢性肝炎,過栄養性脂肪肝)では,AST,ALTは中等度上昇するが,半減期の差によりAST<ALTとなる.
- 肝硬変では,正常肝細胞の減少によりAST,ALTの上昇は軽度にとどまり,さらに細胞内のALT活性は正常に比して著しく低下するため,血中の比もAST>ALTとなる.
- アルコールによる傷害はミトコンドリアに及ぶためAST-mが逸脱し,アルコール性肝障害ではAST>ALTとなることが多い.健常人ではAST/ALT>0.8である.
- 胆汁うっ滞時のAST,ALT上昇は通常軽度から中等度であるが,胆石の総胆管嵌頓時には,ときに急性肝炎との鑑別を要するほどの高値を一過性に呈することがある(AST>ALT).胆道内圧の急速な上昇により一過性に肝細胞膜の透過性亢進をきたすと考えられている.γ-GT,ALPなどの胆道系酵素の上昇とASTの急速な正常化を示す場合には考慮する必要がある.
- 急性心筋梗塞,骨格筋傷害や溶血性貧血では組織中の分布を反映し,ASTの上昇が主でALTの上昇は軽度である(急性心筋梗塞でALTの上昇を伴う場合は,ショックによる肝細胞壊死を考える).
- 脂肪肝の診断やC型肝炎のインタフェーフェロン治療対象者の選択には,病態識別値として30U/lが適当と考えられている.
基準値・異常値
基準値 | 13~33U/l |
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高値 |
Critical/Panic value 次に必要な検査ウイルス肝炎マーカーの検索,PT-INR,血小板数,Bil,ALP,γ-GT,アンモニア,Alb,ChE,AFP,PIVKA-Ⅱ,LD,CK,血清蛋白分画 |
低値 |
次に必要な検査UN,クレアチニン,服用歴の確認 |
予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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JCCLS共用基準範囲
基準範囲 |
13~30U/L JCCLS(日本臨床検査標準協議会)が健常者の大規模調査データをもとに、日本国内で共通に利用可能な基準範囲として設定したもので、日本医師会をはじめとする関連団体の賛同を得て公表された基準範囲です. |
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