項目名称
アミラーゼ
臨床的意義
- 腹痛,背部痛,体重減少,下痢などの消化器症状,アルコール多飲者,中高年になり急に糖尿病が出現した場合など膵炎や膵癌を疑う症状を認めた場合には,スクリーニング検査として血中アミラーゼを測定する.しかし,血中に逸脱したアミラーゼの半減期は約2~4時間と短く,膵炎発症から検体採取までの時間で値が大きく異なる.アミラーゼ上昇の程度と膵炎の重症度とは必ずしも並行しない.
- 膵・唾液腺から血中への病的逸脱:膵実質の炎症,破壊や膵管閉塞・内圧上昇,膵液うっ滞が生じるとアミラーゼが血中に逸脱して上昇し,膵実質の荒廃や広範切除など膵残存機能の低下により減少する.唾液分泌障害があると,膵の場合と同じように唾液腺由来のアミラーゼが血中へ逸脱する.
- 腎からの排泄低下と血中停滞:腎不全ではアミラーゼの尿中への排泄が低下し,血清アミラーゼが増加する.血清中のアミラーゼの一部が免疫グロブリンや多糖体と結合したマクロアミラーゼは尿中に排泄されないから,血清アミラーゼが持続的高値を示す.
- 消化管や卵管内アミラーゼの腹腔内漏出・吸収:十二指腸の壊死,あるいは穿孔が起こると,いったん分泌されたアミラーゼが再吸収されて,血中アミラーゼが増加する.
- アミラーゼ産生腫瘍からの異所産生:肺癌や卵巣癌,骨髄腫の一部でまれにアミラーゼを異所性に産生する.
- アミラーゼは他の膵酵素と比べて膵特異性が低い弱点はあるが,現在最も汎用されている.
基準値・異常値
基準値 | 60~190U/l(基質Et-G7-PNP;参考値)、37~125U/l(基質Gal-G2-CNP;参考値) |
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高値 |
次に必要な検査
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低値 | 膵外分泌不全(慢性膵炎非代償期),膵癌末期,膵全摘後,高血糖(糖尿病)次に必要な検査
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予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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JCCLS共用基準範囲
基準範囲 |
44~132U/L JCCLS(日本臨床検査標準協議会)が健常者の大規模調査データをもとに、日本国内で共通に利用可能な基準範囲として設定したもので、日本医師会をはじめてとする関連団体の賛同を得て公表された基準範囲です. |
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製品情報
Lタイプワコー AMY・IF
添付文書記載の |
基準範囲* 血清・血漿 44~132U/L 尿 50~500U/L *金井正光,他:臨床検査法提要(改訂第34版),564(2015). |
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Lタイプワコー アミラーゼ
添付文書記載の |
(1)BG5P基質法での参考正常値* (2)JSCC標準化対応法での参考正常値* [(1)の集計データをBG5P基質法とJSCC標準化対応法との相関性より補正して求めたものです.] *児玉隆成,松本祐之,森下芳孝,中根清司,高阪彰:臨床検査 機器・試薬,11,259-267(1988). (3)基準範囲*2 *2 日本臨床化学会:臨床化学,34,350-361(2005). |
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