TRAb
TSH-binding inhibitory immunoglobulin(TBII),抗TSH受容体抗体
項目名称
TSHレセプター抗体
臨床的意義
- Basedow病の診断・寛解判定,特発性甲状腺機能低下症の診断,胎児・新生児甲状腺機能亢進症の診断・発症予測,甲状腺眼症・皮膚症の診断に有用である.Basedow病で陽性となり,橋本病,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎,甲状腺癌などの一部で弱陽性を示す.また,特発性甲状腺機能低下症,甲状腺眼症,甲状腺皮膚症で陽性となる.
- 未治療Basedow病での陽性率は,第1世代法では90~95%,第2世代法では95~100%と報告されている.遊離甲状腺ホルモンの上昇を認める患者で本検査が陽性であればBasedow病とほぼ診断できるが,陰性でもBasedow病は否定できない.Basedow病が疑われるにもかかわらず本検査が陰性の場合は,TSAb,放射性ヨード(またはテクネチウム)甲状腺摂取率などが鑑別に有用である.また,弱陽性は無痛性甲状腺炎などの一部でもみられるため,患者の状態に応じて上記検査による鑑別を行う.
- 本検査値はBasedow病の疾患活動性と相関を示し,また,治療経過中に変動するのでBasedow病の寛解判定指標の一つとして有用であり,陰性化例では陽性持続例に比較して明らかに抗甲状腺薬中止後の再発が少ない.しかし,陰性化例での再発,陽性例での寛解なども多く,また,寛解持続期間の予測は困難であるなど,その予後予測上の有用性は限定的である.
- 本検査法では,甲状腺刺激抗体(TSAb)とTSH作用阻害抗体(TSBAb)を区別できないため,阻害抗体による特発性甲状腺機能低下症においても陽性となる.同一患者においてもTSAbとTSBAbは混在し,どちらの活性が優位になるかにより甲状腺機能は亢進または低下と変化する.甲状腺機能低下症においてTBII陽性の場合はTSH作用阻害抗体の存在が疑われる.
- TSHレセプター抗体はIgGが主体であるため胎盤通過性であり,TSAbと併せて胎児・新生児甲状腺機能亢進症の診断・発症予測に有用である.検査法の世代間の比較は困難だが,第1世代法で50%以上の場合は胎児・新生児への影響を考慮する.
- 特有の眼症状を有する患者で,画像診断により眼窩腫瘍が否定され本検査が陽性であれば,甲状腺機能にかかわらず甲状腺眼症と診断できる.
- 国際単位表示で1.0~1.5U/lは疑陽性として扱い,患者の状態に応じて経過観察または他の検査により鑑別を行う.
基準値・異常値
基準値 | 第1世代法:10%未満、第2世代法:15%未満,または1.0IU/l未満 |
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高値 |
【陽性】
次に必要な検査Basedow病が疑われるが本検査が陰性の場合は,TSAbを測定.放射性ヨード(またはテクネチウム)甲状腺摂取率も有用. |
出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
アキュラシード TRAb
添付文書記載の |
参考正常値* 2.0IU/L未満 <判定上の注意> ・参考正常値は、測定条件や検体によって異なる場合がありますので、各施設で設定することが望まれます. ・検体中に非特異反応物質(異好性抗体等)が存在する場合は、正しい測定結果が得られないことがありますので、測定結果の判定は他の検査や臨床症状等を考慮して担当医師が総合的に判断してください. *吉村弘 他:医学と薬学,59(6),1111(2008) |
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