PSA
human kallikrein 3
項目名称
前立腺特異抗原
臨床的意義
- 血液中PSA値は前立腺癌患者で上昇し,また病勢をよく反映して変動することから,その診断,予後判定および経過観察の指標となる.
- 前立腺癌スクリーニング,前立腺癌診断:全国的に前立腺癌検診が導入されてきており,50歳以上の男性では一度はPSA検査を勧める.検診時PSA値が0.9ng/ml以下の場合は3年間隔,1.0~4.0ng/mlの場合は毎年の検診を勧める.特に2.0~4.0ng/mlの場合は将来前立腺癌になる危険群と考え,毎年の検診を強く勧める.PSA値が4.0ng/mlより高値の場合,二次検診としてPSA再検,経直腸前立腺触診,経直腸超音波検査,free PSA/total PSA比,PSAD,PSAD-TZ検査などを行う.
- 前立腺癌が疑われる場合は,経直腸超音波ガイド下,多数箇所前立腺生検を行い,確定診断を行う.また,定期的にPSA値を測定し,PSAV,PSADTを求める.前立腺癌の生検陽性率はPSAが4~10ng/mlで25~30%,10ng/ml以上で50~80%と上昇する.total PSAの4.1~10.0ng/ml(グレーゾーン)の癌診断精度の向上を目指して,年齢階層別PSA,PSA-ACT,free PSA/total PSA比,PSAD,PSAD-TZ,PSAV,PSADTなどが試みられている.
- 一般的に正常範囲内であると考えられているPSA値4.0ng/ml以下の男性でも,生検で検出される前立腺癌は,悪性度の高い癌も含めて,まれではないと報告されている.PSAの基準値を低く設定することの注意すべき点は,臨床的に意味のない癌の発見をいかにして避けるかということである.現時点では,触知不能だが臨床的に意味のある前立腺癌を見つけるのに最適なPSAの値を推奨できるような長期成績はまだ得られていない.
- 直系家族(父または兄弟)に前立腺癌患者が1人以上存在する場合には,家族性前立腺癌の可能性もあり,40歳代でPSA検査を受けることにより早期に前立腺癌を検出できる可能性が高まる.
- nomogram:PSA値と前立腺癌病期の間には高い相関が認められている.PSA値,病理Gleason scoreと臨床病期からpathological stage,予後診断を行うためのnomogram作成が試みられている(例:Partin nomogram,Kattan nomogram,日本版ノモグラム).
- 前立腺癌治療の経過観察:PSAは根治的前立腺全摘除術後,根治的放射線照射後の経過観察やホルモン療法中の経過観察を行ううえでも非常に有用である.根治的前立腺全摘除術後,測定感度以下に低下したPSA値が再上昇することにより,より早期に再発を感知できる.
- 根治的放射線療法後に,再発を疑わせるような一過性にPSA値が上昇するPSA bounceという現象が認められることがある.そのメカニズムは不明であるが,その後のPSA値の推移を観察することが重要で,必要なら再発の有無を生検などで精査する必要がある.
- ホルモン療法に伴うPSAの推移は治療効果をよく反映し,PSAの最低値はホルモン療法の反応性に対する重要な指標である.ホルモン療法に不応になったとき,内服ホルモン剤を中止すると,ときに観察されるいわゆるアンチアンドロゲン除去症候群の観察にも有用である.
- 悪性度が低い前立腺癌に対して無治療経過観察(待機療法)をすることがあるが,その経過観察中のPSAの推移の観察は非常に重要である.
基準値・異常値
基準値 | Tandem-R換算で4.0ng/ml以下 |
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高値 |
前立腺癌,前立腺肥大症,前立腺炎 |
予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
アキュラシード PSA[Ⅱ]
添付文書記載の |
参考基準範囲* 4ng/mL以下(血清) <判定上の注意> ・検体中にヒト抗マウス抗体(Human Anti Mouse Antibody:HAMA)等の異好性抗体や非特異反応物質が存在する場合は、正しい測定結果が得られないことがありますので、測定結果の判定は他の検査や臨床症状等を考慮して担当医師が総合的に判断してください. *亀山周二:臨床検査ガイド2011~2012,902(2011) |
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