HBc抗体
項目名称
抗HBc抗体
臨床的意義
- 宿主側が産生する抗体のうち感染初期より陽性となり,その後HBs抗原が陽性の期間は持続的に陽性である.
- HBs抗原が陰性化してもHBc抗体は陰性となることはない.通常HBV感染診断はHBs抗原の検出により可能であるが,HBs抗原量が少ない場合や一過性感染ではHBs抗原が検出されない場合があり,このような症例ではHBc抗体の検出は意義がある.HBs抗体はまれに陰性化することがあるが,HBc抗体は持続陽性を示すため,最も感度のよい感染マーカーといえる.
- HBc抗原の存在期間に比例して抗体価が上昇するため,持続感染では一過性感染の場合と比較して桁違いに抗体価が高い.抗体価が高い場合は持続感染(広義のHBVキャリア)と診断でき,抗体価が低い場合は一般に既往感染と考える.
- HBc抗体価の高低の判定は,従来のRIAでは血清を200倍に希釈した検体で測定し,抗体価が変化しない場合は高抗体価と判定していたが,最近のCLIAではカットオフ値10.0以上を高抗体価の目安として判定している.
- HBs抗原陽性者には,必ずHBe抗原,HBe抗体,HBV-DNA定量を同時に測定するが,HBc抗体価も測定しておくとよい.HBc抗体価が高い症例は持続感染例と考えられる.HBV感染の既往を証明するためには,たとえHBs抗体が陰性でもHBc抗体を検査することに意義がある.HBV感染の既往は後述するように肝移植の際のドナーとして適合するか否かの判定に利用される.
- HBs抗原とHBV-DNAがともに陰性であるが,HBs抗体とHBc抗体が陽性であるドナーから肝移植が行われた場合,レシピエントにB型急性肝炎(ときに劇症肝炎)が発症する可能性が高いことが知られている.HBV感染後に血中にウイルスが存在しなくなっても,肝臓にはかなり長期にウイルスが存在するものと考えられる.前述のように,既往感染者でもHBs抗体が陰性化することがあるため,ドナーの判定にはHBc抗体の測定は重要である.
- HBs抗原が陰性でもHBc抗体が陽性の場合には肝内にウイルスが存在していることがあるため,いわゆるoccult(latent)HBV感染と呼ばれるような症例においても肝癌の発生には留意すべきである.最近,HCV感染者においてHBc抗体陽性者が陰性者よりも肝癌発生のリスクが高いこと,インターフェロン療法の有効例であってもHBc抗体陽性者が陰性者よりも肝癌発生のリスクが高いことが報告されている.このようなことから,HBs抗原が陰性でHBs抗体やHBc抗体が陽性の場合,単なる既往感染としてかたづけられない面がある.
基準値・異常値
基準値 | 陰性:1.0S/CO未満 |
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高値 |
【陽性】HBV持続感染(高抗体価)またはHBV既往感染(低抗体価) |
出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
アキュラシード HBc抗体
添付文書記載の |
1.0C.O.I.以上は陽性、1.0C.O.I.未満は陰性 (当社社内データ) <判定上の注意> 感染後であっても抗体が産生されていない場合や、産生されていても少量の場合には、本品での判定が陰性となる場合があります.また、検体中に非特異反応物質(異好性抗体等)が存在する場合は、正しい判定結果が得られない場合があります.判定結果に基づく臨床診断は、臨床症状や他の検査結果と合わせて担当医師が総合的に判断して下さい. |
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