PRA/TRC/ARC
項目名称
血漿レニン活性/総レニン/活性型レニン
臨床的意義
- PRA,TRCおよびARCは循環系レニン・アンジオテンシン系の活性評価に用いる.特にPRAが広く用いられている.TRCは方法が煩雑で,臨床的意義も乏しく現在では測定されることはまれである.高血圧,水・電解質代謝異常をきたす病態や疾患で異常値を示す.また,食塩摂取量,交感神経活性,薬剤などにより,その測定値は影響を受けるので,それらの点を考慮して,評価することが必要である.
- 特殊な病態を除いては,ARCはPRAと同様な変動を示す.PRAは加齢とともに低下し,高齢者では低値を示す.一方,新生児では高値を示し,12歳頃までに成人値となる.また,男性で高値と性差を示し,レニン分泌は交感神経系の調節を受けるために,夜間睡眠時に比して,早朝から昼間に高値を示す日内変動がある.
- 本検査は,原発性アルドステロン症や腎血管性高血圧症などの二次性高血圧の診断に必須である.血漿アルドステロン濃度と同時に測定し,評価することが臨床的意義をさらに高める.特に原発性アルドステロン症では両者の比率(血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比)がスクリーニング検査としての感度を高める.
- また,腎血管性高血圧症や原発性アルドステロン症のスクリーニングには基礎値を測定するだけでなくレニン分泌刺激試験後の測定値が有用である.レニン分泌刺激試験として,従来はループ利尿薬フロセミドと立位負荷を組み合わせたものが用いられていたが,侵襲が大きいために,推奨されなくなっている.現在は侵襲の少ないアンジオテンシン変換酵素阻害薬であるカプトプリル負荷試験が行われている.
- AⅡはレニン分泌を抑制し(negative short feedback)さらに輸出細動脈を収縮させる.アンジオテンシン変換酵素阻害薬はAⅡ濃度を減少させることによりレニン分泌の抑制を解除する.同時に腎の糸球体濾過量が低下するために,密集斑を介してのレニン分泌が亢進する.
- 腎血管性高血圧症では分泌刺激試験後には過大に反応する.正食塩食(常食),無投薬下カプトプリル50mg内服60分後のPRAが12ng/ml/hr以上,あるいはPRA増加が10ng/ml/hr以上または増加率150%以上を陽性としている.また,PRAが負荷前3ng/ml/hrの場合は400%以上の増加を陽性としている.一方,原発性アルドステロン症では,分泌刺激試験後も低値を示す.
基準値・異常値
基準値 |
〈PRA〉臥位:0.2~2.7ng/ml/hr、立位:0.2~3.9ng/ml/hr 〈ARC〉臥位:2.5~21.4pg/ml、立位:3.6~63.7pg/ml |
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高値 |
高レニン性本態性高血圧症,腎血管性高血圧症,悪性高血圧症,腎実質性高血圧症,褐色細胞腫,レニン産生腫瘍,Bartter症候群,Gitelman症候群,脱水,低食塩食,利尿薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,肝硬変,ネフローゼ症候群,慢性心不全,Addison病,原発性選択的低アルドステロン血症など 次に必要な検査血漿アルドステロン濃度(PAC)の測定を行い,PAC/PRA比を評価する.さらにカプトプリル負荷試験を行い,PACも同時に測定する. |
低値 | 低レニン性本態性高血圧症,原発性アルドステロン症,特発性アルドステロン症,糖質コルチコイド反応性アルドステロン症,低レニン性選択的低アルドステロン症(糖尿病腎症,間質性腎炎,腎盂腎炎など),高食塩食,β遮断薬,Liddle症候群,偽性アルドステロン症(甘草を成分とする漢方薬,グリチルリチン製剤など),AME症候群,DOC産生腫瘍,先天性副腎酵素欠損症(11β-水酸化酵素欠損症,17α-水酸化酵素欠損症など)など次に必要な検査血漿アルドステロン濃度(PAC)の測定を行い,PAC/PRA比を評価する.さらにカプトプリル負荷試験を行い,PACも同時に測定する. |
予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
アキュラシード レニン(ARC)
添付文書記載の |
参考正常値 血漿* <判定上の注意> 検査中に非特異反応物質(異好性抗体等)が存在する場合は、正しい測定結果が得られない場合があります.測定結果に基づく臨床診断は、臨床症状や他の検査結果等と合わせて担当医師が総合的に判断して下さい. *田村功一,前田晃延:日本臨牀(増刊号7版),68,601-607(2010). |
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