血漿アルドステロン濃度(PAC)
項目名称
アルドステロン
臨床的意義
- PACは新生時期に最も高値を示し,加齢とともに低下する.60歳以上の男性や閉経後の女性では有意に低値を示す.また,ACTHの分泌調節を受けるために,早朝に高く,深夜に低いという日内変動を示す.一方,レニン・アンジオテンシン系の分泌調節を受けるために立位で高値,高食塩食摂取下では低値を示す.さらに黄体期や妊娠中には卵胞期の2~4倍に増加し,性周期の影響も受ける.
- アルドステロンの分泌過剰により,細胞外液中のK+の低下,HCO3-の増加と軽度のNa+の増加がみられ,高血圧,低K血症および代謝性アルカローシスなどの特徴的な病態を示す.一方,アルドステロンの分泌低下は低血圧,高K血症,代謝性アシドーシスとなる.したがって,血圧や水・電解質,酸塩基平衡などの異常やそれらに伴う臨床徴候を示した場合のスクリーニング検査として有用である.特に血漿レニン活性と同時に測定することにより診断的意義が高まる.
- 本検査は,高血圧,低K血症,高K血症,アシドーシス,アルカローシスなどをきたす病態や疾患におけるレニン・アンジオテンシン系の活性を評価する目的で行われる.原発性アルドステロン症や腎血管性高血圧症などの二次性高血圧の診断に必須である.血漿レニン活性と同時に測定し,評価することが臨床的意義をさらに高める.特に原発性アルドステロン症では両者の比率(血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比)がスクリーニング検査としての感度を高める.さらに各種浮腫性疾患や水・電解質,酸塩基平衡異常の鑑別診断や病態の把握を目的に検査が行われる.
- 二次性高血圧として頻度の高い腎血管性高血圧症や原発性アルドステロン症のスクリーニングには基礎値を測定するだけでなく,レニン分泌刺激試験後の測定値が有用である.レニン分泌刺激試験として,従来はループ利尿薬フロセミドと立位負荷を組み合わせたものが用いられていたが,侵襲が大きいために,推奨されなくなっている.現在は侵襲の少ないアンジオテンシン変換酵素阻害薬であるカプトプリルを用いた負荷試験が行われている.
- AⅡはレニン分泌を抑制し(negative short feedback),さらに輸出細動脈を収縮させる.カプトプリルはAⅡ濃度を減少させることによりレニン分泌の抑制を解除する.同時に腎の糸球体濾過量が低下するために,密集斑を介してのレニン分泌が亢進する.原発性アルドステロン症では,分泌刺激試験後も低値を示す.PACも変化しない.原発性アルドステロン症のうち,片側副腎からアルドステロン過剰分泌を示す腺腫,過形成そして多発微小結節は片側副腎摘除で治癒が期待できることから,局在診断が重要である.
- 通常はCT,MRI,副腎シンチグラムによる検出が可能であるが,検出できない病変に対してACTH負荷副腎静脈採血によるPACの測定が有用である.
基準値・異常値
基準値 | 血漿(血清) 随時:36~240pg/ml、臥位:30~159pg/ml、立位:39~307pg/ml、 尿:7.5μg/day以下 |
---|---|
高値 |
原発性アルドステロン症,特発性アルドステロン症,糖質コルチコイド反応性アルドステロン症,腎血管性高血圧症,悪性高血圧症,腎実質性高血圧症,褐色細胞腫,レニン産生腫瘍,Bartter症候群,Gitelman症候群,脱水,低食塩食,利尿薬,肝硬変,ネフローゼ症候群,慢性心不全,妊娠,経口避妊薬など |
低値 | 低レニン性選択的低アルドステロン症(糖尿病腎症,間質性腎炎,腎盂腎炎など),原発性選択的低アルドステロン症,高食塩食,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,Liddle症候群,Addison病,偽性アルドステロン症(甘草を成分とする漢方薬,グリチルリチン製剤など),AME症候群,DOC産生腫瘍,先天性副腎酵素欠損症(11β-水酸化酵素欠損症,17α-水酸化酵素欠損症など)など次に必要な検査血漿レニン活性(PRA)の測定を行い,PAC/PRA比を評価する.さらにカプトプリル負荷試験を行い,PRAも同時に測定する. |
予想外の値が認められたとき |
|
出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
無断転載を禁止します
「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受け、当社が転載しているものです。
転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。
製品情報
アキュラシード アルドステロン・S
添付文書記載の |
参考基準範囲* 血漿 10.4~142.3pg/mL <判定上の注意> ・基準範囲は様々な要因により変動する可能性がありますので、各施設にて適した値を設定して下さい. ・検体中に非特異反応物質(異好性抗体等)が存在する場合は、正しい測定結果が得られない場合があります.測定結果に基づく臨床診断は、臨床症状や他の検査結果等と合わせて担当医師が総合的に判断して下さい. *自社データ(血漿:214例、24時間蓄尿:34例) |
---|