項目名称
(1→3)-β-D-グルカン
臨床的意義
- (1→3)-β-D-グルカンは真菌細胞壁を特徴づける主要な構成成分で,接合菌,いわゆるムコールを除くすべての真菌にみられる.したがって,血中(1→3)-β-D-グルカンは侵襲性深在性真菌症のマーカーとなり,極微量の血中(1→3)-β-D-グルカンを検出できる本法は侵襲性深在性真菌症のスクリーニングテストとして有用である.また,経時的に測定することにより治療効果の判定もできる.
- Pneumocystis jirovecii(旧:P.carinii)は元来,原虫として扱われていたが,近年,遺伝子の相同性により真菌と目されるようになった.ニューモシスチス肺炎(旧:カリニ肺炎)の際の血中(1→3)-β-D-グルカンの上昇はかなり特徴的で,AIDS患者に胸部X線写真上のスリガラス状陰影,動脈血ガス分圧の低下と併せて認められれば診断はまず間違いない.
- 発色合成基質法(ファンギテックGテストMK)の基準値は従来20pg/ml以下とされているが,筆者が最近行った検討によると,30pg/ml以下が妥当とするのがよいと思われる.免疫不全状態にある患者に発熱がみられた場合,血中β-グルカン値が60pg/mlを超えていれば70%の確率で真菌感染によるものと診断でき,30pg/ml以下であればほぼ100%否定できる.
- 保険診療上は,カンジダ抗原,D-アラビニトール,Cryptococcus neoformans抗原またはAspergillus抗原と併せて実施した場合は,主たるもののみ算定される.
基準値・異常値
基準値 |
発色合成基質法(ファンギテックGテストMK):20pg/ml以下 比濁時間分析法(β-グルカンテストワコー):11pg/ml以下 |
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高値 |
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予想外の値が認められたとき |
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出典:「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介・熊坂一成
©Ishiyaku Publishers,Inc.,2008.
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製品情報
β-グルカン テストワコー
添付文書記載の |
カットオフ値* 11pg/mL((1→3)-β-D-グルカンとして) <判定上の注意> ・検体によっては測定中に非特異的濁りを生じて正しい測定結果が得られない場合があります.測定結果に疑問がある場合には、反応タイムコースあるいは希釈試験等により非特異的濁りの有無を確認して下さい. 希釈にはβ-グルカン前処理済み検体用希釈液を用いて下さい. ・セルロース系透析膜による血液透析を受けた患者およびレンチナン等の真菌由来の(1→3)-β-D-グルカン製剤の投与を受けた患者の検体は、測定値に正誤差を与える場合があります. ・術後、一過性に(1→3)-β-D-グルカンが上昇する場合があります. ・高濃度のエンドトキシンは測定値に正誤差を与える場合があります. *当社社内データ |
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β-グルカン シングルM30テストワコー
添付文書記載の |
カットオフ値 11pg/mL((1→3)-β-D-グルカン) (当社社内データ) <判定上の注意> ・術後、一過性に(1→3)-β-D-グルカンが上昇する場合があります*2.臨床症状と合わせて担当医師が総合的に判断して下さい. ・検体中に非特異反応物質(異好性抗体)が存在する場合は、正しい測定結果が得られない場合があります.判定結果に基づく診断は、臨床症状や他の検査結果等と合わせて担当医師が総合的に判断して下さい. *2丸藤 哲,石谷利光,小島 琢,伊藤敬子,櫻谷文香,森本裕二:日本集中治療医学会雑誌. 12(4)387-393(2005). |
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